第1章 幹細胞ってなに?
私たちの体は細胞でできている
人間の体は、約60兆個もの細胞からできています。心臓の筋肉を動かす細胞、血液を運ぶ細胞、脳で情報を伝える細胞など、それぞれが役割を持っています。
健康を保つには、この細胞たちが常に新しく入れ替わり、バランス(恒常性)を維持していることが大切です。バランスが崩れると体調不良や病気につながり、時には元に戻らない「不可逆的な変化」に進んでしまうこともあります。
幹細胞とは? ― 新しい細胞を生み出す“種”
幹細胞は、体の中の「修理屋さん」であり「種」のような存在です。古い細胞が入れ替わるときや、ケガをした部分を修復するときに、新しい細胞を生み出す源になります。
幹細胞の特徴は2つあります。
- 分化能力:いろいろな種類の細胞に「変身できる」力
- 自己複製能力:自分と同じ幹細胞を増やせる力
この2つの力で、幹細胞は私たちの体の健康を支えています。
幹細胞の種類
- 造血幹細胞 ― 血をつくる
骨髄に存在し、赤血球・白血球・血小板といった血液のもとを作ります。血液は常に新しく入れ替わるため、この働きがなければ生命維持はできません。 - 間葉系幹細胞(MSC) ― 骨・軟骨・脂肪などに変わる
骨髄、脂肪、臍帯、歯などに存在し、骨・軟骨・脂肪・筋肉・血管・心筋などに分化できます。さらに、炎症を抑えたり、損傷を修復したりする作用も期待されています。 - 神経幹細胞 ― 脳や神経を支える
脳や脊髄で働き、神経系の発生や維持に関わります。幹細胞研究では、遺伝子SOX2が神経幹細胞の維持に必須であることが示されています。
iPS細胞とES細胞 ― 多能性幹細胞の発見
- iPS細胞(人工多能性幹細胞)
皮膚などの細胞を人工的に「初期化」して作る幹細胞。SOX2などの遺伝子を使って作製されます。難病や加齢による筋力低下の治療、特に目や筋肉の再生医療に応用が進められています。 - ES細胞(胚性幹細胞)
受精卵から得られる幹細胞で、あらゆる細胞に分化できる力があります。遺伝子NANOGやSOX2が、この細胞の多能性や自己複製の維持に深く関わっています。
第2章 幹細胞がひらく新しい医療
1. 再生医療ってなに? ― 体を根本から修理する発想
年齢やケガ、病気によって失われた体の機能を取り戻すために注目されているのが再生医療です。
幹細胞やそこから生まれる成分を活用して、体を根本から「修理」することを目指します。
有名なのがiPS細胞を使った研究で、目や筋肉の病気を治す臨床研究が進んでいます。
2. 幹細胞培養上清液 ― 細胞が出す栄養や信号を活かす
幹細胞を使う方法のひとつが幹細胞培養上清液です。幹細胞が培養されるときに分泌する「栄養」や「信号」を集めた上澄み液のことです。
この中にはサイトカインと呼ばれる成長因子が含まれ、以下の働きが期待されています。
- 傷を修復する
- 血管を新しくつくる
- 肌のシワを改善する
幹細胞を直接移植する方法に比べ、コストを抑えやすい点も注目されています。
3. エクソソーム ― 細胞同士の“手紙”
幹細胞培養上清液の中でも重要なのがエクソソームです。
細胞同士がやり取りする「手紙」のような存在で、細胞を修復したり元気づけたりするメッセージを運びます。
- 炎症を抑える
- 血管を新しく作る
- 傷ついた組織の修復を助ける
- 免疫のバランスを整える
薬に比べて副作用が少ないと考えられています。
4. 美容や健康への応用 ― 身近になりつつある再生の力
幹細胞培養上清液やエクソソームは、美容や健康の分野で幅広く応用されています。
美容の分野
- 肌の若返り(シワやたるみの改善)
- 毛髪再生(薄毛・抜け毛対策)
- 肌全体のハリやツヤを取り戻す
健康の分野
- 糖尿病でのインスリン分泌改善
- 血管の健康維持(動脈硬化やEDの改善)
- 神経疾患や難病(パーキンソン病・ALS・脳梗塞後の回復)
実際に「肌が若返った」「髪が増えた」「リウマチの数値が安定した」といった体験談も報告されています。
幹細胞を直接使わない濾液療法の進歩によって、より安全で均一な品質での提供が可能になっています。